マーケット短信 Vol.172 Jun, 30 2009

「小売業のブランド価値」
前号で「トイザラス」,「KBトイ」など米国玩具小売業のブランド化に触れたが、日本には無い子ども向けの業態「アメリカンガールプレイス(AGP)」, 「ディランズキャンディバー(DCB)」も自店の枠を超えブランド価値をビジネスに活かす。
セレブ御用達の「キットソン」は「DCB」のチョコレートをレジ周りに、「AGP」の人形の本は「ボーダーズ」や空港も扱うなどブランド戦略が進む。日本 も最盛期の「ハローマック」は買う側が玩具をイメージし、「キディランド」は独特な商品アソートメントでその名は広く認知されていた。最近は「ヴィレッジ ヴァンガード」が、遊べる本屋を旗印に全国展開し若者の支持を得たが、何れも自店のためだけのブランド使用に留まりブランド価値を高めるビジネスの仕組み は未着手。
ホビーは「ボークス」のブランドが女性に浸透し可能性を感じさせるが、PBを持つ「イェローサブマリン」はブランド確立には至っていない。むしろかつて玉 川高島屋で独自の世界を見せていたぬいぐるみの「パッシー」があれば、広義の玩具グループからストアブランドのビジネス展開が、形で示された可能性大と思 うことしきり。店が存在する価値を知り店自体のブランド価値を高めることに注力せずば、伸びるネット通販等に対する対応策を自ら放棄することになる。
トイザラスやKBトイが展開した小売ブランドによるビジネス形態”ストア ウイズイン ストア”の展開は、日本でも真剣に考えられて良い。

「価格へ傾く心情」
消費に関する社会的背景は大きく変わった。
食品は安全安心面では自然に近い食品を求めるが、買う場面では価格が決定の大きな要素だ。
アパレルはファストファッションが急激に伸長、「FOREVER21」,「H&M」,「ZARA」が集結の原宿は上の年令層までが大挙して狭いエ リアに集まる。今人気の企業を見ると、「ユニクロ」,」「ABCマート」,「ニトリ」,「マクドナルド」など、商品的な魅力がある上に納得できる価格の企 業が並ぶ。価格が魅力のアウトレットセンターは、来月チェルシー「あみプレミアムアウトレット」開業。今後は超一流ブランドを集積し広域から集客する施 設、中級ブランドを主体に日常的な利用の施設に分化しつつ、日本市場に定着するだろう。

「ライセンサーと小売の距離」
毎年米国と日本のライセンスショーを見るが、どちらが良いではなく彼我の差はかなり大きい。
ライセンスがビジネスとして確立している米国と、企業が自社のブランドを使って本業以外で稼ぐことに少なからぬ抵抗感があったり、ライセンスに関して全く 無関心だったりする日本とでは、ビジネス確立への道程は明らかに異なる。
最も感じるのはライセンサーと小売間の距離だが、ライセンス契約し商品化する際のメーカーの役割などは、流通主導権が小売に移った感のある米国にはとても追いつけないほどに違う。
基本的には流通のあり様が大きく異なる処からその差は生れているが、小売がライセンスを取得し独占的にPB商品を開発できるか否かは、自社ブランドの確立にも多大な影響をもたらす。
商品が形になるまでの過程に小売が絡むことが常態化している米国と、問屋の商品力に大きく依存する日本の小売業の現状は、商品開発の主体性という問題にも 連関。ライセンサーと小売の距離,メーカーと小売の距離は、間にある者が如何に機能を発揮するかにより方向性も決まる。
現在日本で伸びている企業の共通項は、業態に関係なく自ら小売を展開する或いは自社の商品を中心に小売を組織化しているかに行き着く。「ユニクロ」, 「ABCマート」,「チュチュアンナ」がそうだが、自らがライセンサー,メーカー,問屋更に小売でもある「サンリオ」の様な企業もあり、小売業の果たす役 割は今後益々拡大して行く。
ライセンスというと先ずキャラクターを挙げる日本では、過剰供給のキャラクターの喰い合いが起き、アート,スポーツ,コーポレイト等のライセンスビジネス は、小売業との繋がりが薄く発展形を見通し難い。然し米国ほどではないが日本においても、最終的に小売業がライセンス商品を販売しなければビジネスは完結 しない現実があり小売業への期待度は益々大きくなる。

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