葉佐弘明の「マーケット短信」 Vol.290 May,25 2014

「スーパーストアとディスカウントストア」

 「トイザラス」日本上陸時に、多くのメディアに”カテゴリーキラー”の呼称で喧伝された、米国発の量販型専門店業態が変調を来している。

 この業態の先駈けはトイスーパーストア「トイザラス」だが、その成功の後各商品カテゴリーで多様なスーパーストアが生れ、これらを集積したSCの新業態”パワーセンター”が生れた。

音楽,映像ソフトは「タワーレコード」,「ヴァージンメガストア」が生れたが既に米国に店は無く、オフィス用品は「ステープルズ」,「オフィスデポ」が競い、スポーツは「スポーツオーソリティ」を「ディツクススポーティング」が抜いた。

その後ディスカウントストア「ウォルマート」と「ターゲット」にホールセールクラブ「コストコ」が総合小売業として市場の主役になり、各商品カテゴリーの取扱いを強化してシェアを高め、スーパーストアとの間で熾烈な競争が生れた。

早くにシェア争いに敗れたのは[トイザラス]、「ウォルマート」,「ターゲット」に抜かれ3位に後退し、同様にAVソフトは「タワーレコード」,「ヴァージンメガストア」に替り、ディスカウントストアが圧倒的なシェアを確保する様になる。

直近では日本にも上陸した「オフィスデポ」,「オフィスマックス」が合併し「ステープルズ」を追うが、ネット通販の伸張と直接競合のディスカウントストアの影響により前途多難の様相だ。

米国では大型SC開発は稀で、地域密着のライフスタイルセンター(LSC)とパワーセンターが主流で、LSCは富裕層が対象であり価格訴求型の多いパワーセンターはその対極にある。

コンセプトは変ってもパワーセンター開発は続き、今後のスーパーストアはより高度なMDと人の力を兼ね備えた新業態が求められている。

「深耕型専門店」

 チューリッヒの「パストリーニ」は素敵な店だ。坂道に建つことで出来る段差を買い回る楽しさに替え、上手な人が弾くとえもいわれぬ音が出るトイよりは本物に近い鉄琴が語る商品政策に、深い知識を持つ社員の接客どれも専門店の鏡だ。

ブリュッセル「セルネールス」は、経営者の思いがレイアウト,陳列,会話などから伝わる店で、常連客にとっては掛替えのない店と感じさせる。唯一の欠点は主人のいない店が想像できない事。

「ロンドンの高級百貨店」

ロンドンで必ず行くのは王室御用達の百貨店「ハロッズ」で、玩具売場はその規模と内容から高い集客力を持つが、改装で場所が移動し面積は減っても環境もMDも展示も数段良くなった。

これまでは幾つかの大きな部屋に商品が大枠で纏められていたが、玩具売場全体を”トイキングダム”と呼び壁面沿いに100㍍を超える距離の売場が連続し、商品の繋がりと纏まりが分かり易く処々に企画展示があり高額品も見やすく、多くの商品が歩く顧客の目に留まる良さがある。

更に玩具売場に続いて担当者付のTVゲームコーナーが独立、「PS4」と「Xbox one」の一騎打ちが演出され、日本と比較した時にTVゲームの社会的地位の違いさえ感じさせられてしまった。

これも高級百貨店「セルフリッジス」は他店で上層階にあるインテリアを地階に定め、「サムスン」と「ソニー」のTVを主に、映像と情報家電に特化した売場を、担当者を付けて確定していた。

既存の「キャスキッドソン」と通路を挟み向かい側に「アンソロポロジー」を入れ、壁を境に背中合せに「MUJI」も導入、英,米,日の三つの異なるライフスタイル提案をする売場が作られ、この店の地階は様変わりし百貨店の枠を超えた。

「ロンドンの小さな通り」

 東京[銀座通り]から連想するとニューヨーク[五番街],ロンドン[リージェントストリート],パリ[サントノーレ通り]と続くが、地価の高い香港[コーズウェイベイ]は通りの魅力に欠ける。

ロンドンへ行った時に表通り以外で行きたくなるのは、[マリルボーン・ハイ・ストリート]。

 知られているのは高級SM「グレンローズ」とテスコによる世界初のエクスプレス業態「テスコエクスプレス」に「コンランショップ」位だが、おしゃれで個性的な専門店や飲食店が続き、地下鉄一駅間の距離を歩くのが楽しみな通りだ。

 東京も個々人が何かの時に行きたくなる、マイストリートが求められる時代なのではないか。

 グループ83例会 (6月期)

大阪例会  6/ 6(金) 10:00~12:00 備後屋会議室
札幌例会  6/ 9(月) 16:00~18:00 葉佐研会議室
東京例会  6/17(火) 13:00~16:00 日本青年館
テーマ  「ヨーロッパの専門店と百貨店」 葉佐弘明

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