そうなのですね。満州で終戦を迎えたそうですが、いつ死ぬかもわからないという戦争の悲惨さを、身にしみて感じられたのではないでしょうか。
晩年、つぎつぎと同僚の俳優が亡くなられていくことを、森繁さんは「そのうち俺もいくから席をとっておいてくれ」と言われ、人を見送ることの辛(つら)さを「生きるということは、なんて悲しいことだろう」と言われていたそうです。
森繁さんの活躍ぶりと巧妙なユーモア―は、とことん死と向きあって、人生の悲しみを知ったところから生まれてきたものなのかも知れませんね。
死は、自分で経験できません。人の死を見て学ぶことしかできないのです。森繁さんは、死から命の事実をしっかりと学び、それを生きる力にしていったのだと、感銘深く思います。