『バガヴァッド・ギーター(神の歌)』は、紀元前1世紀頃成立したヒンドゥー教の聖典です。インドの大叙事詩『マハーバーラタ』の一部を構成しており、18章700詩節から成り立っています。
ヒンドゥー教という宗派を超えて尊重されており、約2000年にわたってインド人の精神生活に影響を与えてきました。「ヨーガ教典」としても有名で、解脱道(げだつどう)として「行為のヨーガ・親愛のヨーガ・知識のヨーガ」とヨーガ思想の精髄が述べられています。
『バカヴァッド・ギーター』は、それまでインドの主流であった出家して社会生活を捨てなければ解脱の境地に達することはできないという思想を乗り越えるもので、つまり社会生活を営みながら解脱できるという道を開いたものとしてインドで圧倒的な支持を得ました。
「執着から欲望が生じ、欲望から怒りが生ずる」(第2章第62節)
『バカヴァッド・ギーター』は、欲望と怒りは人間にとって最も根源的な悪であり、輪廻の原因であると説きます。今日の戦争や環境破壊という地球規模の大きな問題も、一人ひとりのこころの欲望と怒りが根源となって起こっていると言えましょう。私たちが自らの内面と対峙し、こころの平安を得るとき初めて、これらの問題を解決することができるのです。世界とは、人間のこころの表れだということなのですね。
(大谷大学「きょうのことば」から引用・抜粋)
―
読んでみたい方は、辻直四郎先生(講談社)、上村勝彦先生(岩波文庫)の翻訳本が出版されています。